ヘッジFの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円買い越し(米ドル売り越し)は、4月末に記録した17.9万枚から先週は10万枚まで縮小してきた(図表1参照)。このような円買いポジション縮小に伴う円売りは、先週一時149円まで米ドル高・円安へ戻す動きの一因と考えられた。では、ヘッジFの円売りはいつまで続くのだろうか。
【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 ヘッジFの円買いポジション縮小の理由の1つには、夏休み前のポジション整理がありそうだ。このCFTC統計の円ポジションには、例年8月にかけてそれまでと逆方向に動く傾向が確認されたが、それはまさに夏休み前に過大なポジションを整理する影響と考えられる。そうした観点からすると、円買いポジション手仕舞いに伴う円売りは、8月にかけてまだ続く可能性はあるだろう。
もう1つ注目された点として、円買いポジションの損益分岐点割れがあった。ヘッジFの円買いポジションの損益分岐点の目安は、過去半年平均の120日MA(移動平均線)の可能性があったが、米ドル/円は7月中旬頃からそれより米ドル高・円安となった(図表2参照)。つまり円買いポジションが損益分岐点を割れて損失が拡大し始めたことにより、ポジションを手仕舞う動きが増えた可能性が考えられる。
【図表2】米ドル/円と120日MA(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 ただ、米ドル/円の120日MAは7月24日現在で146.5円程度なので、ここ数日その近辺まで米ドル安・円高に戻ってきた。つまり円買いポジションの損失拡大が一段落した可能性が出てきたわけだ。このまま円買いポジションの損失が一段と拡大しないようなら、ポジションの手仕舞いに伴う円売りも収まる可能性があるだろう。
もう1つの観点は、米通貨政策の影響だ。トランプ政権が始まってから、ヘッジFの売買戦略は、トランプ政権の通貨政策との連携がかなり強くなった印象がある。トランプ大統領は4月20日にSNSで公表した「非関税障壁8項目」の一番目に通貨操作をあげるなど、米国の貿易不均衡を助長する可能性のある貿易相手国の大幅な通貨安への不満が強い。そうした中では、150円の大台が近づく中で、ヘッジFがさらなる円安をもたらす円売りには慎重になる可能性もあるのではないか。
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【為替】ヘッジファンドの円売りはまだ続くのか? | 吉田恒の為替デイリー | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
円売りの理由その1=夏休み前のポジション整理
ヘッジFの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円買い越し(米ドル売り越し)は、4月末に記録した17.9万枚から先週は10万枚まで縮小してきた(図表1参照)。このような円買いポジション縮小に伴う円売りは、先週一時149円まで米ドル高・円安へ戻す動きの一因と考えられた。では、ヘッジFの円売りはいつまで続くのだろうか。
【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
ヘッジFの円買いポジション縮小の理由の1つには、夏休み前のポジション整理がありそうだ。このCFTC統計の円ポジションには、例年8月にかけてそれまでと逆方向に動く傾向が確認されたが、それはまさに夏休み前に過大なポジションを整理する影響と考えられる。そうした観点からすると、円買いポジション手仕舞いに伴う円売りは、8月にかけてまだ続く可能性はあるだろう。
円売りの理由その2=円買いポジションの損益分岐点割れ
もう1つ注目された点として、円買いポジションの損益分岐点割れがあった。ヘッジFの円買いポジションの損益分岐点の目安は、過去半年平均の120日MA(移動平均線)の可能性があったが、米ドル/円は7月中旬頃からそれより米ドル高・円安となった(図表2参照)。つまり円買いポジションが損益分岐点を割れて損失が拡大し始めたことにより、ポジションを手仕舞う動きが増えた可能性が考えられる。
【図表2】米ドル/円と120日MA(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
ただ、米ドル/円の120日MAは7月24日現在で146.5円程度なので、ここ数日その近辺まで米ドル安・円高に戻ってきた。つまり円買いポジションの損失拡大が一段落した可能性が出てきたわけだ。このまま円買いポジションの損失が一段と拡大しないようなら、ポジションの手仕舞いに伴う円売りも収まる可能性があるだろう。
トランプ政権の通貨政策に忠実なヘッジF
もう1つの観点は、米通貨政策の影響だ。トランプ政権が始まってから、ヘッジFの売買戦略は、トランプ政権の通貨政策との連携がかなり強くなった印象がある。トランプ大統領は4月20日にSNSで公表した「非関税障壁8項目」の一番目に通貨操作をあげるなど、米国の貿易不均衡を助長する可能性のある貿易相手国の大幅な通貨安への不満が強い。そうした中では、150円の大台が近づく中で、ヘッジFがさらなる円安をもたらす円売りには慎重になる可能性もあるのではないか。